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ポリイミド (PI) 材料の特性解析ソリューション

[はじめに]
特殊材料市場において収益性を維持するためには、特殊機能を持つ高分子材料を開発し、迅速に上市する必要があります。機能性高分子材料としての性能を把握するためには、補完的で多様な分析手法を用いた解析が不可欠です。機能性高分子材料の開発および改良は、ベースポリマーの設計や構造、物性などについて検討することにより進展を遂げます。分子レベルでの側面を理解するための化学的試験、および製品自体の物理特性との関連性を理解するための物理的試験といった解析アプローチを利用することで、機能性高分子材料の開発を効率的に改善することができます。

ポリイミド (PI) 材料

エンジニアリングプラスチックであるポリイミドは、優れた耐熱性、引張強度、曲げ弾性率、そして電気絶縁性を有する高分子材料であるため、フィルム、フレキシブル OLED ディスプレイ材料、フレキシブルプリント基板、リチウムイオン二次電池用バインダーといったさまざまな用途にカスタマイズされた製品があります。一般的には、前駆物質のポリアミド酸を熱処理して、イミド化することにより製造されます。前駆物質のポリアミド酸は有機溶媒に溶けますが、得られるポリイミドは不溶性のため、イミド化後は固体サンプルに適用できる技術によってのみ測定可能です。

例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー (GPC) による前駆物質の分子量分布解析、ダイレクト質量分析による製品の表面および外層分析、熱分解によるベースポリマーの構造解析、動的粘弾性測定 (DMA) および示差走査熱量測定 (DSC) による物性試験など、材料を評価するためのいくつかの技術が存在します。

1) APC (Advanced Polymer Chromatography:アドバンスドポリマークロマトグラフィー) による分子量分布解析

分子量分布、つまり分子量の差と不規則性の度合い(分子量分布)が、ポリマーの基本的性質、さらには材料としての特性に大きな影響を及ぼすことが知られています。ポリイミドの場合、分子量分布の改善とコントロールは、前駆物質であるポリアミド酸の分子量分布を測定することで評価されます。下の図は ACQUITY APC (ACQUITY Advanced Polymer Chromatography) を使用して、ポリアミド酸を測定した結果を示しています。APC の原理と技術については、「APC によるポリマーの特性解析ソリューション」を参照してください。

図:ACQUITY APCによるポリアミド酸の分析 (n=5)

従来の GPC 技術よりも優れた、サイズに基づく高分解能分離技術を用いることで、機能性高分子材料の分子量分布のより精密かつ正確な測定が可能になります。さらに、スループットや再現性についても従来の GPC より向上しているため、正確な評価を迅速に行うことで日常的なキャリブレーションが可能になり、材料品質の向上もサポートします。

2) 脱離エレクトロスプレーイオン化 (DESI)-QTof による表面分析

AEX、XPS、Tof-SIMS、MALDI などは、材料の表面を直接分析できる技術として知られています。しかし、表面元素の情報、分子構造情報、表面での濃度と分布、深さ方向情報など、取得したい情報の種類に応じて、使用できる技術に制限があります。DESI は、溶媒を微細な帯電液滴にしてスプレーすることで、材料表面の成分を抽出、脱離、イオン化し、生成されたイオンを高分解能質量分析計 (HRMS) へと導入して分析する、質量分析イメージング技術です。以下の特徴を持つ DESI イメージングを活用して、ポリマー添加剤の表面分布、表面成分の劣化の比較、汚染物質の付着、洗浄効果の測定、表面材料の化学変化を可視化することができます。

下の図は、NMP で超音波処理したサンプルを、コントロールサンプルと比較した結果を示しています。フルスキャンデータからサンプル間の強度の違いに基づいて特定の分子量を抽出することで、表面成分の存在量と分布の違いを視覚的に把握できます。A) はスペクトルイメージング、B) は同じ箇所を 10 回連続で測定した結果です。

図:DESI-QTof MS によるポリイミドフィルムの分析

3) 熱分解 APGC-QTof(大気圧ガスクロマトグラフィー)によるベースポリマーの構造解析

高分子の構造解析と特性解析は、より高性能で新機能を有する新規高分子材料を開発するための基盤です。Py-GC/MS (熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析)は、高分子の構造解析に広く使用されている技術の 1 つです。この技術では、高分子化合物の熱分解物はキャピラリーカラムに導入され、分離、イオン化を経て、MS によって測定されます。Py-GC/MS で得られたデータは元素および組成解析に使用されます。しかし、これまで GC/MS で使用されてきた電子イオン化法 (EI) では、分子関連イオンではなく、多くのフラグメントイオンが生成されるため、構造解析を極めて複雑にします。

高分子化合物の構造解析により適した手法として、APGC (大気圧ガスクロマトグラフィー)と高分解能 QTof 質量分析計を併用することで、この構造解析プロセスの複雑さを軽減できます。APGCはソフトイオン化法であるため、EI と比較してフラグメンテーションが少なく、分子関連イオン情報を得ることができます。このシステムでは MS 内部でフラグメントイオンを意図的に生成できるため、分子関連イオンと、それに関連するフラグメントイオンの正確な質量情報を、1 度の分析で得ることができます。さらに、構造解析を支援する UNIFI ソフトウェアを使用することで、GC(EI)で用いられるスペクトルを元にしたデータベースを使用せずに、主要なマーカー成分の元素組成と化学構造を簡単に推定できます。APGC の原理と技術については、 「ポリマー分析の新技術 APGC ソリューション」を参照してください。

サンプルおよびブランクサンプルを測定した後、ソフトウェアによりサンプル固有の熱分解成分(熱分解物)を抽出します。分子関連イオンの正確な質量スペクトルで元素組成を解析して、フラグメントイオンを割り当てることで熱分解物の構造を推定します。元素組成と構造解析の例を図 A) に、熱分解物から推定されたポリマー構造を図 B) に示しました。

GC/MS 分析でも、ソフトイオン化法によって得られたデータを使用することで、構造解析はより容易で単純になります。

4) 高性能熱分析装置を使用した物理的特性

より過酷な条件下での使用など、特定の機能を持つ材料の開発を進めるためには、物性を精密かつ正確に把握することが重要です。この試験によって得られる材料の劣化挙動に関する評価は、上述した分子レベルの知見と相関します。エンジニアリングプラスチックであるポリイミドは、優れた耐熱性と引張強度により、DSC(示差走査熱量測定)および DMA(動的粘弾性測定)などの熱分析技術でしばしば評価される材料です。より精密かつ正確な熱分析では、さまざまな形状および種類の固体サンプルの取り扱いが可能なシステム設計だけでなく、最大限の温度コントロールおよび最小限の変動が要求されます。

TA Instruments 社の DSC システムは、リニアに温度変化する測定だけでなく、昇温を変調させながらの測定も可能です。この温度変調 DSC では、総熱流を温度上昇率に応答する成分(可逆)と応答しない成分(不可逆)に分離できるため、複雑な熱事象を、熱容量やガラス転移などの可逆成分と、揮発、結晶化、変性などの不可逆成分に分離することによって、簡単に理解することができます。

図:変調 DSC 法によるポリイミドフィルムの分析

温度上昇に伴って、弾性になるか粘性になるかは、材料の物性に大きく影響します。DMA 測定では、応力が加えられている状態での温度変化に応答する、粘弾性の挙動を測定することが可能です。下の図は、コントロールサンプルおよび抽出サンプルの温度に対する貯蔵弾性率と、正接損失 (tan delta) を重ねて表示したものです。測定した温度範囲の中で、正接損失 (tan delta) の値は 1 未満であるため、両方のサンプルにおいて弾性的要因が優位です。しかし、抽出されたサンプルの開始温度 (onset temp.) が低い値を示しているので、NMP による処理は、開始温度 (onset temp.) の低下とともに、材料の粘性を高めると推測されます。

図:DMA によるポリイミドフィルムの分析

前駆物質の分子量分布、高分子の構造解析、材料表面の変化などの分子レベルの情報を取得できる化学的試験法と、温度や応力に対する材料の物理的挙動を把握するための物理的試験法を用いることで、機能性高分子材料の開発をより効率的

ACQUITY APC システム

に進めることができます。

1) 分子量分布

<ACQUITY APC システム>

  • 高速かつ高分離能
  • 最適設計による低拡散
  • BEH テクノロジー:サイズ排除用のハイブリッド粒子カラム

2) 表面分析

DESI – QTof

<DESI – QTof>

  • ダイレクト質量分析
  • マトリックス不要
  • 大気圧イオン化
  • 非破壊分析

3) ポリマーの構造解析

熱分解-APGC-QTof

<熱分解-APGC-QTof>

  • フラグメンテーションの少ないソフトイオン化
  • 分子関連イオンの検出
  • 高い感度と選択性
  • 元素組成と構造のより簡単な解析

4) 物理的特性

DSC 2500            TGA 5500          RSA-G2

<熱分析装置>

  • 温度変調機能
  • 温度制御の最大化と変動の最小化
  • 幅広い固体に適用可能な分析技術

DESI および APGC はユニバーサルなイオン源の一部であり、SYNAPT G2-Si や Xevo G2-XS QTof などの高分解能 MS に対応し、真空解除しなくても交換可能です。

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関連情報

ACQUITY APC システム

APGC

SYNAPT G2-Si HDMS

Xevo G2-XS QTof

DSC(示差走査熱量計)

TGA(熱重量測定装置)

DMA(動的粘弾性測定装置)

ACQUITY APC (Advanced
Polymer Chromatography)
システム

The ACQUITY APC システム:
パフォーマンス最適化

ACQUITY APC システムにおける
分析法開発

ポリマー分析の速度、分解能、
柔軟性の向上

ACQUITY APC (Advanced Polymer
Chromatography) システム